講師・司会・プレゼン対策 伝わる声を作る 登壇者のためのボイスアドバイザー 栗本です。
昨日のブログのつづきになります。
昨日上げたポイントは
・一文が短い
・適度に笑いをとっている
・ゆっくり言う言葉と速く流す言葉を使い分けている(抑揚含む)
・間があいたとしても「えー」とか「あのー」を挟まない
・構成が上手い
という内容でした。
では、どこがどう上手くて、下手な人はどんな風にしゃべっているのかを一つずつ解説します。
昨日のブログから動画をご覧になりつつ、確認してみて下さいね。
今回の内容
一文が短い
「私がどんな想いで自分の言葉にこだわりをもっているかということをお話をして~」から始まる冒頭。
注目すべきは次の文節。
「実際言葉に体温と体重はありません」
「温度を測れることも出来ないし、体重を測ることもできません。」
「重さも計る事はできません。」
文章を短くスパスパ切っています。
これがスピーチ下手な人の場合は
「私がどんな想いで自分の言葉にこだわりをもっているかということをお話をしたいと思っていて、そこから何かを皆さんが感じ取ってくれたらいいなと考えていますが
私が常に心がけていることは、自分の話している言葉に体温と体重をのせる事なんですが、でも実際に言葉に体温と体重はなくて、温度も測れないし体重も測れないんですよね。」
となります。
こうなるとどこに重点を置いたらいいのか分からない。それこそ聴いていて意味不明だからこそ眠くなる。
という罠にはまります。
本当に酷い場合は、ひらすら「~で、~で、~で」と延々と文章が終わらないという事も。
自分でも何を喋っているのか分からなるので、注意が必要です。
適度に笑いをとっている
動画が始まって3分~3分25秒あたりです。
どうしたら自分の思いを上手く言葉で伝えられるのか。
それを必死で考え、自分で自分の演説を録音して聴いた。
というエピソードのオチ。
「撮った録音を寝る前にベッドで聴いたんです。するとね、驚くほどよく眠れるんです。つまらないから。」
会場に笑いが起きたのが分かります。
話を聴いている方も、ずーっと真面目な話だと疲れるんですよね。
同じ体勢で聴いていると、そのままウトウト…なんて事も。
その「眠気覚まし」的な役割で笑いを入れています。
こうする事で、より聴衆に興味を持って話を聴いてもらえるようになります。
ゆっくり言う言葉と速く流す言葉を使い分けている(抑揚含む)
先ほどの続きでだいたい3分25秒くらいからです。
「自分で話を聴いてみると」(間)
「自分の話し方が」(間)
「自分がおもっている以上に」(間)
(ここで少し間を置いて)
「早口で」(ゆっくり念を押すように)
「一文が長くて」(同じく念を押すように)
「言葉に抑揚がない」(同じく念を押すように)
「という事がわかるんです」(ここだけすごく早い)
これが出来ていない人は、↑の文をすべてつなげて一気に喋ってしまいます。
「自分で話を聴いてみると自分の話し方が思っている以上に早口で!それで一文がすごく長くて、言葉に抑揚がないという事がわかるんですよね」
といった感じに。
強調したいところ
「早口だった」「一文が長かった」「抑揚がなかった」
ところがはっきりと聞き取れれば、ああ、それがダメだったんだなと聴衆は理解できます。
ですからその後に続く「ということがわかるんです」が多少くちゃくちゃっとなっても全く気になりません。
間があいたとしても「えー」とか「あのー」を挟まない
全体を通して聴いていると、途中でちょいちょい間があることが分かります。
しかしそのたびに誰かの顔を見て、不要な接続詞をあえて飲み込むように、話を立ち止まらせています。
たったそれだけ?とお思いかもしれません。
ところが、それこそが「間延び」を防ぐ大変有効な手段だったりします。
下手に「えー」「えーっと」「あのー」を挟まない事で、言い切る形が出来上がり、強い意思を持った演説に聞こえます。
構成が上手い
まず最初に
①「皆さんにどうなって貰いたいか」(この動画の場合は「話すと言う事に関して何かを感じ取って欲しい」)という結論(思い)から。
そして、
②「人前で話すという事が必要無い人生を生きている人もいる。けれども人前で話さなければいけない環境であるからこそ上達した。」という環境を説明。
次に
③「何故、そもそも人前で話す事を学ぼうと思ったのか。」を説明。その時に過去の「話を聴いて貰えなかった」というエピソードを披露。
この時点で「ええ!?この人でも話を聴いて貰えなかった事があるの!?」という興味が引きつけられます。
だからこそ
④ICレコーダーをポケットに入れて自分の演説を録音して聴いて勉強した。(ここで当初は良く眠れる演説だったと笑いを取る)
最後に
⑤どんな話し方の本を読むより、まずは自分がどんな話し方をしているのか確認してみる。それが一番の上達法だ。
と締めくくります。
さて、皆さんが今までの人生で幾度となく聴いてこられた「来賓挨拶」。
少し思い返して見て下さい。
面白い挨拶をされる方だなぁという記憶がある方は、皆上記のように上手く組み立てられたお話をされていたと思います。
ここで何となく「そういえば言い切りで印象に残る言葉を残してた人がいたなぁ~」と思い出しました。
そう、小泉進次郞氏のお父上である、小泉純一郎氏。
中でも思い出されるのが次の台詞。
「痛みに耐えてよく頑張った!感動した!おめでとう!」
簡潔にも程があります(笑)
これは2001年5月27日の大相撲夏場所千秋楽にて、負傷をおして千秋楽まで取り組み優勝した貴乃花に内閣総理大臣杯を授けながらの言葉でした。
もしここで、怪我の痛みに耐えながら土俵で表彰を受ける貴乃花に対して
「今場所は横綱の怪我の事もあり、千秋楽まで非常にハラハラしておりました。これもひとえに日頃の練習の賜で~ウンタラカンタラ~おめでとうございます!」
だと、興ざめも良いところだったかもしれません。
「言い切り」というのは、使い方を間違えると後で訂正しなければいけない事案が出てきます。
しかし、上手く使えば非常に力強い、そして誠実な印象を与える事ができます。
前に立って話す機会のある方は、是非参考にしてみて下さいね。