統一地方選挙も後半戦 うぐいす嬢を頼まれた方に必須の話し方
以前(4年前)に書いたブログ↓が、サイト内アクセスで1位を獲得していました。
それだけ関心が高いなら…!というわけで、今回は2023年統一地方選挙前半を終えたこの時点で、以前より詳細な続きをお届け致します。
あまり歓迎されていない!?「うぐいす嬢」の声
選挙の時期になると、かならずSNSやニュースサイトのコメント欄などで見かける「うぐいすウルサイ!」という書き込み。「子どもがやっと寝たところなのに起こされた」「ウルサイだけで家の前に来た候補には絶対に入れない!」「あんなの全面禁止にすればいいのに!」など、うぐいすとして働いている人にとっては胸が痛い文章が並びます。
とはいえ、選挙にはかなり厳しいルールがあり、どの候補もその制約の中で活動をしています。
「名前だけ連呼する意味がわからない!」
わかります。なんでやねん!てなりますよね。けれど、実は名前を連呼する事は許されていてあまり細かく政策を訴えることは走っている車から出来ないことになっています(止まっている車の上などで、街頭演説をするのはOK)。
「普段ぐずって大変な子どもが、やっと寝付いたと思ったのに…!」
ほんとうに申し訳ございません。私自身も、家の中から「うるさいわー!!」と叫んだことがあります(外には聞こえなかったと思いますが)。とはいえ、選挙期間中以外で毎日表でマイク持って歩いて叫んでまわるのも迷惑極まりない事も相まって、選挙期間中だけはこうやって候補者の名前をお知らせせざるを得ない…という事情もあったりします。
なので、出来るだけ大声を出さずに…と目立たないようにすると、その候補の支援者の方から「うちの前まだ来てへんやろ!!」とお叱りのお電話を受けることも。若い世代には受け入れがたいこの制度も、それなりの年齢の方にとっては「当たり前」で「来ないのはおかしい」「ないがしろにするつもりか」等の声があるのも事実です。
よほど知名度のある候補者であれば、一切の街宣活動なしに当選する事もできるでしょう。昔、東京都知事に立候補された青島幸男さんは一切の活動をしないと公言し、当選されました。けれど地方でアナウンサーや芸能人の経験もなく、いきなり一般会社員から立候補された方からすると、やはりまず名前を知っていただかないといけないですし、「あいつなんやねん!!」と思われてもまずは「説明させてください!!」と食い下がらないといけない。当選しないと意見を出せる場に行くこともできない。応援して下さった皆様からの要望を、村会・町会・市会・県会・国会へもっていかないといけない。議員というのはあくまでも「意見を託された代表」ですので、とにかく当選する事が第一目的になります。
そのお手伝いをするのが「うぐいす嬢」のお役目(ここから本題)。活動する際には候補者の代弁者として細心の注意を払う必要があります。
司会業の人ほど要注意 丁寧さが逆噴射することも
普段、司会やガイド等でお客様に対して非常に丁寧な言葉で接している方ほど「全方位」に丁寧になりすぎる場合があります。
例えば
・「皆様のお声を聞いて~」
を
・「候補者のお声を聞いて~」
と、言ってしまっていることも。うぐいす初心者の方ほど、このあたりで必ず躓くので注意が必要です。
基本はテンプレートとして覚えこむことが大切
また、普段使わないような言葉遣いが多いうぐいすでは、ついついこれでいいかな?と文章を省略して話してしまい、とんでもない事になる場合もあります。
例えば
・「31日から始まりましたこの選挙、連日連夜大きなスピーカーを持ち込みまして大変お騒がせをして申し訳ございません。どうかお許しをいただきまして、〇〇、〇〇へとご支持ご支援賜りますよう重ねてお願いを申し上げます」
を
・「31日から始まりましたこの選挙、連日連夜、大きなスピーカーで、大変ご迷惑をおかけしております、〇〇、〇〇でございます!」
と、微妙な省略を入れてしまう事で聞こえ方によっては「迷惑をかけている○○です!」となってしまう事も。これはもう陣営の運転手さんも後続車の運動員さんも真っ青です。
選挙カーがお邪魔をしている、という意識を忘れずに
選挙カーは、そこに支援者さんのご自宅があれば、普段お住まいの方しか通らないような細い道でも通らせていただく事があります。
その際、対向車の方が待避所で待って下さったり、道を譲ってくださったりする場合もあり、やはりお礼を申し上げて通行します。
例えば
・「対向のお車の方、お待ちいただきありがとうございます。街宣車お先に失礼致します。ご配慮に感謝申し上げます。〇〇でございます。」
といった感じです。これを何故か「ドライバーの皆様ありがとうございます!」と待って下さった方にではなく、一括して全ドライバーに向けてお礼を言ってしまう方も。
他にも、後続車の方に先に行っていただく場合、ハザードを点灯させて左に寄ります。その上で
・「後続車の方恐れ入ります。どうぞお先にお進みくださいませ。お待たせして申し訳ございません。ご配慮に感謝申し上げます。」
と、低速で走る選挙カーによってご迷惑をおかけしたことを謝罪します。これを「ありがとうございます!」だけで済ませてしまう方も。
学校、病院、保育所の近くなど、マイクをオフにする場面も多々あります。そういった周囲に気を配るのもうぐいすの役目(運転手さんや同乗の方が教えて下さることもあります)。
常に候補者の代弁者として選挙カーに乗っている意識を持って、マイクを握りましょう。
「選挙うぐいす嬢」という仕事がなくなる日
今後、ネット投票やそれに準ずる方法等が浸透し、街頭演説の代わりにオンラインやテレビの専門チャンネル等でいつでも公約や主張を配信できて、それを老若男女すべての人が観て投票の参考にする事が出来るようになれば、選挙に関わるうぐいす嬢の仕事は終わりを迎えるのではないかと考えています。「ネットが使えない」「情報にアクセスできない」等の方に対する解決方法が提示されれば、いずれそうなっていくでしょう。
先日、起業家の先輩とお話していた際に仰った事がとても印象的でした。
『実は、我々はすごい時代の転換点にいるのではないか。それこそ明治の文明開化並みに。娯楽やコミュニケーション方法なども世代間格差があるけれど、一番大きいのは
・情報伝達(自分が子供の頃まだ電話交換手という仕事があったし、緊急連絡は電報だった)
・購買行動(買い物に「行く」以外の手段が激増した)
・通貨&支払い(千年以上続く貨幣の概念が吹っ飛んだ)
と、短い期間に急激に変わりすぎて、若年層と高齢者との上記3点に差がありすぎる。選挙を含め、公的なサービスは全体に周知しないといけないけれど、全年齢に公平な伝達手段が少なくなってしまった。選挙の仕組みも、徐々に変えないといけない時期なのかもしれない。』
まさに、まさに!!
そして、「選挙公報のレイアウトも各候補バラバラで見にくいし読みにくいよね…」と同期の起業家さん。
今後「選挙とはこういうものだ」といった考え方がアップデートされていき、新しい「選挙とはこういうものになった」という移り変わりを目の当たりにできる過渡期に、我々はいるのだなぁと改めて感じています。
世界には選挙権をめぐって内戦となった地域もあります。日本にも昔は女性に参政権はありませんでした。当たり前の選挙権が当たり前じゃない国もある中で、この1票を投じる権利を使って「選挙カーをなくします!」という候補に投票するといった行動も有りだと思うのです。なんて、自らのお仕事をなくすような事を申し上げてはおりますが、いざうぐいすとしてご依頼をいただいた際は、候補の当選に全力を注ぎます。
泣いても笑っても、統一地方選挙いよいよ後半戦。
皆様、選挙に参りましょう!